TOP > UK ROCK etc. > Jeff Buckley 水の中で・・・

jeff buckle僕は体育会系とは程遠いのだけれど、水泳が大好きで休みの日は必ずといっていいほど泳ぎに行く。村上春樹氏が「泳ぐことは僕の人生で起こった最も素晴らしいことのひとつだ」と何かの本で書かれていたのに激しく同意。

文字通り雪が降っても泳ぎに行く。サマソニなどのフェスに行く前にひと泳ぎして、ライヴの後倒れそうになったことも・・・。
とはいえがむしゃらに泳ぐ訳ではなく、特に好きなのは、水の上に仰向けに寝て流されるままぷかぷか浮いていることだ。これはものすごく気持ち良くてオススメ。ただし、たまに子供に蹴っ飛ばされたり、「歩く酒ダル」みたいなおばさんの体当たり攻撃を食らったりすることも・・・。
"全ての生命は水から生まれた"とか何とかいうことをどこかで聞いた記憶がある。命が水からやってきたのであれば、全ての生命は水へと還っていくべきなのかもしれない。ここで言っても仕方ないが、自分が死んだら土の中に埋めてもらうよりも海に散骨希望だ♪ そして、そんな風に水の中で「死」について考える時、1人の天才について思いを馳せずにはいられない。

ジェフ・バックリィ。

一般に90年代のロック・アーティストの死でまず筆頭に挙げられるのは、間違いなくカート・コバーンだろう。カートは、それまでの商業主義に陥った音楽業界を浄化したという考え方ができると思う。90年代前半、カートによって時代の一部が闇に洗い流されたのだとしたら、90年代後半、ジェフは来るべき後世に対し、光を与えたのだと僕は考える。

その筆頭がレディオヘッドであり、トム・ヨークのヴォーカルに顕著に表れているはずだ。トムは生前のジェフのライブに足を運び、「エモーショナルなのにお涙頂戴ものになっていない」と衝撃を受けたそうだ。トムのヴォーカルの変遷の裏には、ジェフの影響が色濃く見えるのだから。

今回は、特にジェフ・バックリィを知らない人のために、オススメアルバムを紹介してみたいと思う。

●「Grace」

ジェフが公式に出したアルバムは、「Grace」1枚のみ。もっと素晴らしい作品もありますが、まずはこれを聴かなければ・・・。
とっつきやすいとは言い難いので聴く人を選ぶ音楽だけれど、レディオヘッドやU2(特に80年代)が分かる方であれば、すんなり入っていけると思う。

●「素描:Sketches For My Sweetheart The Drunk」

彼の死後に出された「素描」では、ジェフがお蔵入りさせた幻の2ndアルバムを聴くことが出来る。神の領域に足を踏み入れたような「Grace」のレベルに達しているとは言えないけれど、よりポップな曲もあり、ロック好きな人には逆に聴きやすいかも。
「80年代はクソだった、Smithsは別だけどね」と本人が語っている通り、ジョニー・マーの煌めくギターを思わせる曲もある。それにしてもこれをお蔵入りさせるとは、ジェフが目指していたものがいかに高いところにあったのかが分かる。

●「即興:Mystery White Boy Tour」

音は良いとは言えないが、僕の知る限り、公式で出ているバンドスタイルのライブCDとしてはこれが最良だと思う。「Grace」の祈りを捧げるような世界とは違い、業火の中で叫び声をあげるような凶暴で荒々しいジェフ・・・。ちなみにThe Smithsの「I Know It's Over」をちょこっとだけカバーしている。

●「Live at "Sin-e"」

現時点で出されているものとしては、これがもっとも「生身のジェフ」に接することができる作品だ。デビュー前のカフェでのライブ盤なので、まだ若干のヴォーカルの若さも目立つけれど、まるで目の前でジェフが歌っているかのような親近感。

僕がジェフを知ったのは、すでに彼がこの世を去った後だった。一度でいいから生で聴いてみたかった・・・。

1997年、ジェフ・バックリィはミシシッピ川で遺体となって発見された。30歳。溺死。

僕はジェフを死後に知ったので、不思議と彼の死が実感できない。CDのスタートボタンを押せば、ジェフのギターが、祈りが、狂おしい絶叫が聴こえてくる。
そこには、懸命に生きているジェフ・バックリィの息吹がたしかに感じられるのだから。


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