
以前から一度は行ってみたいと思っていた。僕がソニック・ユースの音源で一番聴くものは、実は90年代前半頃のライブBOOTだ。キム・ゴードンの声はメロディを無視し、あと一歩で気が狂うのではないかというほど危うい。その両側でサーストン・ムーアとリー・ラナルドのギターが火花が散るようにぶつかり合う。僕は疲れた時、よく何も考えずに彼らの音楽を体に浴びるようにして聴く。
初のソニック・ユースのライブ。彼らの発する轟音を全身で感じてみたかった。そしてその向こう側に見えるものを、知りたかった。
一曲目は、インディーズ時代の大傑作アルバム「Daydream Nation」から「Candle」。
ギターとベースの四人がほぼ横一列に並ぶ姿が、尋常ではないほど格好いい。ん? 四人?
サーストンとキム、リー、あと一人は誰だ? 元ペイヴメントのマーク・イボルトがサポートメンバーとして参加している。
続いて最新アルバム「Rather Ripped」から「Incinerate」「Reena」と立て続けに演奏、特に「Reena」ではキムが楽器を手放し、少女のように躍りまわる。スタイルがよく、とても50代とは思えない。
サーストンはギターを抱えたままなぜかドラムスティックを手にする。これが伝説の(?)ドラムスティックでノイズを生み出す彼独自の奏法だ。
そしてリー・ラナルドの存在も忘れてはならない。ややパフォーマンス過多な2人に対し、職人的で自然な彼の一挙手一投足が一段と映える。
ステージにいるのは50代のミュージシャンなのに、前方では20代と思われるファン達が激しく踊り狂っている。その光景が、不思議だった。
PV映像を見ているような格好よさが瞬間瞬間に訪れ、あっという間に本編が終了した。最初のアンコールでは「Silver Rocket」をやってくれ、最後にはジム・オルークも参加、終始スムーズでクールにライブは進行し、終わった時には10時半を回っていた。
・・・なんだろう、この欠如感は? 何かもの足りない。それが「Teen Age Riot」も「Cool Thing」もやってくれなかったからなのか、始まるまで2時間半以上待たされたからなのか、それとも500円のグレープ・フルーツジュースのせいだったのか、分からない。
しかし会場を後にした時、友達がポツリと言った一言で全てが分かった。
「なんだか感動できなかったね。」
ああそうだ、僕は感動していない。
サーストンもリーもクールだったし、キムも華麗だった。けれど、終始アート映像を見ているような感じで、深いところまで入り込めなかったのだ。あくまで「向こう側」でやっている感じで、そこに行きたいのだけれど、行けない。
広い会場が一体となったCOLDPLAYのライブ。
圧倒されたフィオナ・アップルの狂気。
LA'Sの「Looking Glass」が流れた時は時が止まったように切なくなった。
U2の「All I Want is You」のイントロが流れた時の、心の奥からこみ上げる感動は一生忘れないだろう。
今回のライブは、絵に例えるとポップ・アートのようなものだったと思う。都会的で、とてもスマートでクール。でも僕は、ライブにポップ・アートを求めてはいない。もっと泥臭くてもいい。もっと狂気を見せてほしい。ここではないどこかへ旅立たせてほしい。
あるいは僕も前方の喧騒の中に身を委ねれば、「向こう側」に辿り着けただろうか。
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