
初めてJoy Divisionを聴いたのは、大学時代たまたま雑誌の名盤特集に載っていたのがきっかけだった。今思えばなんて馬鹿だったのだろう。2ndアルバム「Closer」を購入したにもかかわらず、あまりに暗い音楽だと思い半年程放置していたのである。
それが180度変わったのは、友人の家で1st「Unknown Pleasures」を聴いた時だった。
「Shadowplay」、「She's Lost Control」といった曲にガツンとやられた。あまりにかっこよくパンキッシュ、そして新しい。
僕はとんでもない間違いを犯していたことに気付き、すぐさま「Unknown Pleasures」を購入、「Closer」も聴き直してみた。すると、意外にも「Closer」もポップであることに気付く。暗さの正体は、くぐもったように歌う声の主だ。
そして、知った。その声の持ち主、イアン・カーティスがもうこの世にはいないことに。
「コントロール」
(CONTROL 2007年)
出演:サム・ライリー、サマンサ・モートン昨日3月15日、公開初日にシネマライズに足を運んだ。
ここ数日公開が近付くにつれ、期待と共に妙な不安感を感じ落ち着かなかった。
自分だけの恋人だった人がアイドルになって注目を浴びるようになったかのように、雑誌やCMで「コントロール」のコマーシャルを見る度にめまいに似たものを感じた。このままではJoy Divisionがブランドのようになってしまうのではないか。
なんだかパンドラの箱が開かれるみたいだ。好奇心から開けたところ全ての災いが地上に飛び出し、急いでフタをしたら希望だけが残ったという箱。フタをしてしまいたい気分だ。
・・・などと複雑な気持ちで臨んだけれど、映画は既に多くの評論家などが絶賛している通り素晴らしいです。興味のある方はぜひ公開している内に映画館で見ることをオススメします。
監督がU2やデヴィッド・ボウイなどで知られる写真家アントン・コービン。全編モノクロ映画ながら、白黒の中にも多彩な陰影がある映像が美しい。一つ一つの構図も絶妙で、そんな素晴らしい画面にここぞという時にJoy Divisionの音楽が食い込んできてしびれる。
かといって決して独りよがりのアート作品ではなく、ドラマとしてもよくまとまっている。
そして何より、イアン役のサム・ライリーが素晴らしい。特にライブシーンはよくぞここまで、といった感じだ。本物のイアン・カーティスにようやく出逢えたと錯覚する程に惹き込まれてしまった。
イアン・カーティスは、トム・ヨークのような天才でもなければ、モリッシーのような変態でもない。優れた詩を書くけれど、ロックスターに憧れる普通の青年だった。それが音楽によって歯車が狂い始め、2人の女性の狭間で心が引き裂かれてしまったのである。
結末を知っている者としては、ラストに向けて重苦しさが増していく終盤はキツいものがあった。同じくJoy Divisionを題材の一つにした「24 Hour Party People」では、最後残ったメンバーがNew Orderとなり「Blue Monday」を歌うところに希望がある。けれどこの映画はあくまでイアン・カーティスの映画なのだろう。New Orderのメンバーはあくまでバンドメンバーとしてしか描かれていなく、何の救いもない過酷なラストが待ち構えている。
5月17日からは、ドキュメント映画「JOY DIVISION」が公開される。監督は、Radioheadのツアー・ドキュメンタリー「ミーティング・ピープル・イズ・イージー」を撮った映像作家グラント・ジー。
そこでは役者が演じたイアンではなく、本物のイアンに出逢えるだろうから楽しみだ。
もしあなたが「コントロール」を見てJoy Divisionが好きになり、さらに「Unknown Pleasures」「Closer」の2枚を気に入ったのなら、ぜひライブ盤も聴いてみてください。そこにはスタジオ盤の完成された音ではなく、僕らが日常では得られない何かを感じることができるから。
大学を卒業後しばらくしてから、とある友人に「大学時代よりも生き生きしてるね」と言われた。それはちょっと言い過ぎだけれど、当時は何かを求めているのにその何かが分からない、自分が本当に自分の人生を生きているのか分からないジレンマでがんじがらめになっていたように思う。
だからあの頃は毎日、日々の生活では足りない部分を埋め合わせるかのようにJoy Divisionのライブ盤を聴いていた。ライブ盤の方が、より一層イアン・カーティスのハート&ソウルをリアルに感じることができた。
僕はイアンが自殺したからJoy Divisionが好きな訳ではない。Joy Divisionの音楽が好きなだけだ。
そして、イアン・カーティスの音楽に、詩に、叫びに触れると「生」を感じることができる。
時にこもったような内的世界が、時に爆発する瞬間が、1点を見据えたような瞳が、押さえきれない何かにもがくような踊りが。
それは我々が日常生活では到底感じることができないような、焼け付くように刹那なもの。
けれど、それが、彼を死へといざなってしまったのかもしれない。
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映画『CONTROL』試写会